ファッション用のウィッグでも医療用のウィッグでも、困ってしまうのは、どんな製品のウィッグを被っても違和感があること。それで最初のころは「どうせ苦労して試着しても選んでも結果は同じ」と諦め半分でした。
サロンにわざわざ出向いて試着して、それでダメだったので通販の医療用ウィッグを取り寄せて。すべて不似合いだったのでそのまま返品して、姉のファッション用ウィッグを借りて過ごしていました。しかし外出許可を得て病院の周辺を散歩する程度なら問題ないのですが、ラジオ体操やストレッチの真似ごとをしようものなら、簡単にずれてしまうのです。
抗がん剤治療で脱毛を経験した人なら理解できると思いますが、頭髪が少なくなって地肌がみえるようになると、かいた汗がそのままウィッグの内部に溜まってズルズルした状態になります。被っているだけでも不快ですが、頭の上で自分の分身が右に行ったり左に行ったりする感触は、何物にも例えられないほど不愉快で惨めなものです。
人が見ていなかったら、そのままウィッグを頭からもぎ取って地面に叩きつけてやりたい!そのほうが涼しくて隠すところがなくなってスッキリする!結局のところ、入院中はバンダナで過ごしました。
ウィッグの不快感を忘れて穏やかになっていたころ、私を見舞った姉が、「もう一度だけ通販で試着してみない?」と言ってきました。
たしかこのようなことを、けっこう時間をかけて説得してくれました。「アンタは活動的なほうではなくて家にいるのが好きなタイプだから、リハビリや社会復帰が遅れるとそのまま閉じこもり生活に入ってしまいそうだもの。やっぱり、元気になって外に出て働いて欲しい」、姉は少し言いにくそうにしてそんなことも口にしていました。父と母が相次いで急逝して、いまは私たち姉妹2人きりの身の上です。
私はその日を境に気持ちを切り替えることにし、姉の申し出を受け入れることにしました。手元に届いたウィッグは、もう私の必需品となって2ヵ月以上が経過しています。植え込んだ毛髪部分のベースとなるところと裏側が、両面ともネットでできているので、とても軽くて頭にフィットしています。フィット感がいいぶんだけズレません。
着けていても重くないので無意識でいられるのがいちばん気に入っているところです。裏側(頭に直接触れる部分)には、他社のより幅広いすべり止め用のネットもついているので、リハビリしても気になりません。髪は私の希望どおり、フサフサに見えないようにすいてもらってボリューム感を抑えてもらいました。短くして独特の癖毛もカールでアレンジしてもらえたので、これ以上の満足はありません。わがままにおつきあいいただいたアンベリール社の皆様には心から感謝しております。