最近は医療用ウィッグの通信販売でも、ものすごくファッショナブルな製品が増え、1社あたりのブランドの数も増えました。シリーズが次々に誕生して“医療用だから仕方ない”というイメージはまったくなくなったと言えるほどです。
闘病中の女性で毛髪をなくした人にとっては“選ぶ楽しみ”ができて、うれしいことです。ところがその一方で、稀に選択基準や優先順位を間違えてしまっている人がいます。医療用のウィッグ選びは、ファッション性を優先すべきではありません。
「フィット感でありサイズの変化に対する柔軟性」がもっとも大事です。なぜかというと、闘病中(とくに抗がん剤治療)の髪のボリュームは、副作用の出方によって左右され、いっきに抜けてしまう人もいれば、少しずつ1週間-10日-20日と時間をかけて抜けていく人もいます。
最初にウィッグを購入したときの頭のサイズと、抗がん剤を投与されてからの頭のサイズではかなりの違いがあります。またフィット感についても、毛髪の残り具合によって変化していきます。ウィッグを選ぶときはメーカーによってまったく違う構造・設計であるウィッグの裏側をよく観察して、サイズの調整機能がしっかりついているものを選びましょう。良心的で闘病の変化をよく研究しているところの製品は、サイズ調整のためのアジャスターといった機能が付加されています。すべり止めだけではダメで、アジャスターだけでも不十分です。
フィット感は、ウィッグを試着したときの頭との一体感で決めてしまいがちですが、購入時のフィット感は意外にあてになりません。髪のボリューム、毛の細さ、髪質が変化するからです。抗がん剤が投与されると髪は細くなり、髪質もパサパサになります。髪の表面のキューティクルが剥がれ落ちたときのような状態です。そうなるとフィット感が変わり、ウィッグと髪の絡み具合が少なくなったりします。
つまりフィット感が変わりズルっとした感じでウィッグが動いたように思える瞬間が多くなります。そのようなときに丈夫な調整機能がしっかりと縫製されていれば、微妙であっても調整してズレ度合いを軽減できます。
次に大事なのは蒸れない通気性の良さです。闘病中の人は、院内であっても普通の人の倍くらいは体力を使います。その分だけ発汗作用が激しくなりますから、もともと汗かきという人は、1日に1回は必ず下着を取り替えるようになります。院内でウィッグを着用するのは、売店にものを買いに行ったり見舞客が来てくれたりしたときですが、外出許可が出たとき、社会復帰後の自毛が生えてくるまでの間の着用では、人によりビックリするほどの汗を頭皮にかきます。
蒸れると頭皮環境が悪化し、せっかく生えてきた髪が抜けてしまう、衛生的にも良くない、臭いが付着してしまいます。医療用はファッション用とは次元が違います。見た目だけで選ばないようにしましょう。